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「失礼します」
いつものように職員室に入ると、担任は豚まんを食べていた。
一瞬、共食いだ、と思ってしまった自分にうっすら笑みを浮かべる。
「おー、松村、いつも悪いな」
「いえ」
「ほれ、手出してみ」
わたしが差し出した日誌を受け取りながら、担任は今日もキャラメルを差し出した。
交換するようにそれを受け取るものの、別にいらないんだけどな、と苦笑い。
ああ、でも。
明日桐谷にあげればいいや。
やっぱり桐谷中心の思考が回り、そのままスカートのポケットに突っ込んだ。
「んー、どうするかなー」
「……何がですか?」
眉間に皺を刻み、何かの資料を見ながら呟いた豚まん。
そのまま立ち去ろうとも思ったけれど、含みのある言い方に思わず足を止める。
「あー、桐谷のことなんだけどな。あいつ、全然単位足りてないんだわ」
「……へえ」
興味なんて欠片もないように返事をしながらも、その名前ひとつで大きく跳ね上がる心臓。
身体は正直だ。
「一学期はほとんど出席してないからなー。卒業する気あんのかな」
「さあ、どうでしょう」
「せめて期末で赤点取らなかったら何とかなるんだけど」
ってこんな話を松村にしても仕方ないな、と豪快に笑った担任に、愛想笑いを返して職員室を出た。


