「なに?」

「これちょうだい」


すでに摘まれていたシューマイ。

どうぞ、と頷けばナミさんの口の中に消える。

そのままもぐもぐ口を動かしながら、ぺらり、雑誌をめくる。

ああ、指汚いのに。


「つか、このチーク可愛くない? 新色まじ良くね? え、まじこれ神じゃん、買おっかなー」

「……」

「あー、でもこれ高いわ。却下」


大きな独り言を聞かされながら、最後の一口を食べてお弁当箱を仕舞う。

ふわりと香った甘ったるいバニラみたい匂いは、やっぱりナミさんからするものだろうか。


「……香水?」

「んあ? 何が?」

「あ、なんか甘い匂いするから……」


どうでもいいことなのに、無意識に問うていた。

すると、ナミさんにしては珍しく、苦笑いのような表情をする。

なんだろう、と思っていれば。


「あー、これね。蓮がこういうの好きだって聞いたことあったから」


……ああ、なるほど。

それでか。


ふーん、と興味なさげな返事をしてみるものの、それも失礼かなとか今さら思ったり。


「もうだいぶ前のだから新しいの買いたいけど、金欠だしー」

「……そう」

「とりあえず、これ使い切ろうかな。それかバイト増やそっかなー。あ、貢がせたらいいか」


それはどうかと思うけど。

だからといって、口出しするような仲でもないし。

まだぶつぶつ言っているナミさんを放置して、そっと空を見た。