濃紺に染まる赤を追え。





「え、保健室? 大丈夫?」

「うん、今は全然平気だよ。ありがとう」


本気で心配してくれるのが、なんだか少し申し訳なくて、笑ってみる。

すると堤くんは、ほっとしたように微笑んだ。


「そっか、良かった。これ、三限目と四限目のノートなんだけど」

「わ、ありがとう」

「あとこれ、ありがとう」


付け足すように渡されたのは、化学のノート。

わたしが二限目終了後に貸したもの。


「あ、いえいえ」

「いつも助かるよ。じゃ」


短くそう言い爽やかな笑顔を落とし、片手を挙げて去っていく堤くん。

その後ろ姿が男子の集団に消えていくのを見送ったあと、三冊のノートを束にして引き出しに入れた。

そのあと、食べかけのお弁当にまた箸を伸ばせば、感じた視線。

不意に目を向けると、至近距離にあったナミさんの顔。


「……わっ」


思わず、声を上げてしまったけれど仕方ない。

元凶のナミさんは、じっとお弁当箱を覗いていて。