濃紺に染まる赤を追え。





「ああー、痩せたい。切実に痩せたい。これガチで」

「……唐突だね」


いきなり話題が飛んだな、と思うけれど、よくよく考えてみればそれはいつものことだ。

そんな結論に達し、結果わたしはまた適当に相槌を打つ。


「つか、ワンピ買うとすんじゃん?」

「え、そのヒョウ柄を……?」

「例えばの話だってばー、イフね、イフ。それが似合うかどうかって、結局痩せてるか痩せてないかだと思うわけ」

「へえ……」

「いくらダサくても元が可愛かったら何でもいいんでしょ、男は。あ、ラインきた」


その論理は分からないでもないけれど。

脈絡の無さは相変わらず。


チョコデニッシュ片手に、器用にすいすいとスマホを操作するナミさんを見ながら、ミニトマトのヘタを取った。


それにしても、指の動きが速い。

わたしだったら同じ文章を打つのにナミさんの倍くらい時間がかかるだろうな。


そう、ぼんやり思っていれば。



「松村」

「わ、堤くん」


ごっくん。

口に入れたばかりのミニトマトを慌てて飲み込む。

どうしたの、と首を傾げると。


「いや、さっき四限目もいなかったなと思ってさ」

「あ……っと、心配かけてごめんね。ちょっと保健室にいて」


咄嗟に吐いた嘘。

無難だっただろうかと考えを巡らす。