濃紺に染まる赤を追え。






ああ、そうなんだ。

納得すると同時、ナミさんの中で昼休みにここにいることが当たり前になっているらしいことに気付いてしまった。

他に友達いないのかな、この人。

内心、そんな失礼すぎることを考えながら椅子に座る。


「つか、まじ有り得ないんですけどー」

「……」

「会おうとか、まじ意味分かんなくない? ナミはもう別れたつもりなんだけどって感じー」

「……へえ」

「しかもこの前の合コンで知り合ったやつからのライン、まじしつこくてさー」

「……」

「最近電話かけてくるわけ。まじ鬱陶しいから着拒してやったわ」


ああ、そうですか。

だから何、って言いたいところだけど、それは冷凍食品の春巻きと一緒に飲み込む。


「つか、あんたさっきまで何してたわけ?」

「え?」

「だから、何してたのか聞いてんの」

「……」

「ナミが来たときいなかったじゃん。ついにさぼりデビューとかー?」


きゃはは、と高い声で笑う。

まさか、その通りだなんて言えず、だんまりを突き通せば、


「まあどうでもいいけどー。つかこのワンピまじ安いんだけど」


案の定、ナミさんは話を逸らしてくれた。

雑誌の中の全身ヒョウ柄のワンピースを指差してげらげら笑うノリにはついていけないものの、曖昧に相槌だけ打っておく。