濃紺に染まる赤を追え。




ちらっと横顔を盗み見れば、耳に無数の穴といくつかのピアスと、その中で一際輝くルビーのようなものを発見した。



「よっこ」



不意に発せられたテノール。

もしかして、わたしのことを言っているんだろうか。

一応わたし、陽子なんだけど。


首を傾げると、桐谷は口を開いた。


「優等生な学級委員さんが、なんでこんなとこいんの」


先ほどと同じ問いを、もう一度。

少し考えてから、わたしは呟くように言った。


「誰かさんが豚まんとか言って担任を怒らせたから、とばっちり受けて探しに行かされてるの」



皮肉混じりに言うと、けらけらと桐谷は笑う。


「そう。……だからか」

「……何が?」

「さっきの時間も誰かが探しに来てた。隠れたけど」


堤くんのことだ、と思いながらそれを聞く。

やっぱり、堤くんも屋上を最初に探しに来たらしい。