くすり。


そんな笑い声まじりに聞こえたテノール。



その声に、ばっと顔を上げれば。




「こんなとこで何してんの?」




シルキーアッシュの髪。

グリーンのカーディガン。

楽しげに弧を描いた、鮮やかな桜色。





「……きりたに、れん」





そう名前を呟けば、踊り場にいた彼は。



「ん?」



不思議そうに首を傾げて、こっちまで階段を上ってきたのだった。