その傍まで足を運べば、吸い込まれるように捕らわれる身体。
脚の間に挟まれるように座らされる。
背中越しに感じる温もりがこそばゆい。
つまり、後ろからぎゅうの構図の完成である。
「よっこ、いい匂いする」
「……え、なにその変態発言」
「いやこれ、れっきとした彼氏発言なんだけどー」
彼氏って。
……彼氏、って。
ああもう、わたしは慣れてないんだよ、こういうの。
無駄に甘い響きがくすぐったい。
そうは思うものの、自然に緩んでしまう頬。
何だかんだで、嬉しいんだ、わたしは。
桐谷が、以前より教室にいる時間が長くなって。
たまにこうしてさぼっている日は、三限目だけ探しに来て。
放課後、わたしが日誌を書き終えるまで待っていてくれるようになって。
こういう関係になってから、一週間。
胸元のはだけたカッターシャツからちらちらと見えていた赤い跡は、消えていた。
「ねえ、キャラメルいる?」
「ん、ちょーだい」
降り注ぐ夏の日差し。
ただでさえ暑いのに、コンクリートの照り返しと、べたべたに引っ付いてくる桐谷のせいで、これ以上ないってくらいに暑い。