間を繋ぐために、当たり障りのないいつも通りの質問をする。
「あー、もう引退したよ。この前の試合、負けちゃったから」
「そっかー……」
「やっぱり甲子園は遠かったな」
はは、と笑った堤くんは、どこか寂しそうで。
一生懸命練習をしていたことを知っているからこそ、わたしもどう励ましていいか分からず黙り込む。
「でも、自分の出来ることはやったから、後悔はしてない」
その言葉に、落としかけていた視線をぱっと上げると、堤くんはいつものように爽やかな笑みを浮かべていた。
「そっか」
「うん」
次は受験だなー、と呟くように言った堤くんに、わたしも笑顔を返す。
「塾とか行ってるの?」
「あー、もうそろそろ行こうかなって思ってるけど」
「じゃあ今まで行ってなかったんだ?」
「うん」
塾に行ってないのに学年一位だなんて、やっぱり頭の作りが違うんだろうか。
そんなことを思い、無意識にじっと堤くんの頭を見つめてしまう。
ただでさえ賢い堤くんが塾になんて行ったらどんなことになるのだろうと考えると、今さらながらに焦ってきた。
わたしも受験生だというのに、悠長なものだ。