「え? じゃなくて。弁当食わないわけ?」
赤い爪の指で雑誌を捲りながらそう言うナミさん。
そうだ、昼休みなんだ。
ようやく状況を認知し始めた脳。
でも、あまり食べる気がしない。
「……お腹すいてないから、別に」
小さく呟くように言えば、ナミさんはさらに眉間に皺を寄せた。
「ナミ差し置いて自分だけ痩せようとか、まじないわー」
「……はあ」
曖昧に返事をして、ナミさんの雑誌に視線を落とす。
開かれていたページに載っているモデルさんは、楽しそうな笑顔を向けていた。
「ねー、見て見てっ、蓮から!」
ぼんやりとしていた中、唐突に叫ぶように紡がれた名前。
正直すぎる身体は、ぴくり、肩を揺らす。
わっと湧いた教室。
いつもの中央あたりのグループは、みんなが一人の携帯に顔を寄せていた。
身を乗り出すその子たちは、スカートが短すぎて危険だ。
回らない頭で考えるのはそんなことで。
「えーっ、めっずらしー!」
「蓮から誘ってくるとか、激レアじゃん」
「いーなー、まじうらやましー」
ああ、もう。


