「ねぇセラちゃん、名前が持つもうひとつの意味、知ってる? 持ち主じゃなくて、周りの人にとっての」 「周りの人……?」 「僕もよく考えるんだよ。そもそも人はどうして、親しくなると名前を呼ぼうとするんだろうね?」 人が、お互いを名前で呼ぶ理由。 「僕が思うに、それは名前が――――の代わりだからじゃないかな」 若葉くんの言葉を、チャイムが遮る。 我に返ったときには、若葉くんは「さて」とベンチから立ち上がっていた。 慌ててお弁当箱をしまい、歩き出した若葉くんと肩を並べる。