うそつき王子の秘密のキス

 オレの全部を込めたVサインに、岸さんは深々しいため息を吐いて、未練がましい上目遣いでオレを見る。


「奏太が望むなら、どんな髪型でもやったげるけどねぇ。
 君、ハサミってキライだったろ?
 髪を短くするってことは、さ。
 首の周りを、ソレがうろうろすることになるけど大丈夫?」


 う……。


 岸さんに言われて、オレは一瞬固まった。


 う……うん。


 オレが男のくせに女のコみたいに長い髪でいた理由。


 それは、別に『AN^NA』からの指示でも、岸さんの希望でもなく。


 単に、ハサミがイヤだったからだ。


 おっかしいよな~~


 カツターも包丁も、全然大丈夫。


 ナイフに至っては、悪ガキだったもんでガクチュー(中学生)の時からオトモダチ。


 バンド活動でマイクに握りかえるまではずっと持ってたし。


 仲間に抜き身の刃を突き付けられようが、喧嘩で多少切られようが、へのかっぱだって言うのに。


 刃が二つ重なった『ハサミ』の状態になると、どうもイケナイ。


 糸切りばさみでも腰が引けるぐらいだったから。


 今までのカットは、なるべく顔の近くは剃刀で仕上げてもらい。


 ハサミじゃないと出来ない毛先については、伸ばせるだけ髪を長く伸ばした結果の、なるだけ顔から遠い所で作業をしてもらっていた……


 ……んだけども。


 今日から変わるって決めたんだ。