わたしじゃ、怖くて到底出せない早い速度を感じる風がステキだ。


 そう叫んでみたわたしの声に、応えるように、井上君がますますバイクの速度をあげた。


 あっは! 気持ちイイ~~ 


 ガラ空きの夕方の道は、わたし達の他に誰もいなくて。


 見上げれば、やたらに広い空が、青から赤と黒に変わって来てるのが見えた。


 そんな。


 晴れた日には、いつも見られる空の色が、井上君の肩越しに見ると、泣きたいほどキレイに見えるのはなんでだろう。


 ……胸が、ドキドキドキって鳴りはじめたのはなんでだろう。


 急に高鳴って来た心臓の音にびっくりして、わたし。


 井上君をぎゅっと抱きしめた。