「……ここ……職員室……か……?」


 ふんっ! 今ごろ気がついたか~~


 莫~~迦~~ 莫~~迦~~


 オレだって、何年も不良やってたから、こ~~んな追いかけっこなんて慣れっこなんだよっ!


 ん、で。


 弱っちぃヤツに、逃げ込まれて、一番困る所が、ココ。職員室なんだぜ?


 追いつきそうでなかなか追いつかない駆けっこに熱くなって、状況判断、鈍くなってたんだろう。


 ふふふふ。


 オレは、にやっと笑いてぇのをこらえて、代わりに、わざと全身の力をふっと抜いた。


 人間。


 カラダの一部が壊れていると、他の所も、もしかしたらマズい所あるかも……って疑う生き物みたいだ。


 オレは、多少走ったってまだまだイケる。元気すぎるぐらい元気なんだけど。


 普段から声が出ねぇコトは、職員室に詰めてるセンセー達は、全員承知。


 ん、で、苦手なハサミがうろうろしてたから、本当に多少青ざめているせいも手伝って、貧血を起こして倒れる『演技』に成功した。


「いっ! 井上君! しっかり! 今保健室に……!」


 近くに居た、マッチョな体育教師が、慌ててオレを支えて来るから、そいつに向かって、弱々っちくささやく。