どうせ、何を聞いても、オレの髪をいじりたいだけ、としかいわねぇし。実際それだけなんだろうけど。


 床屋代って結構莫迦にならねぇからな。


 出来るだけ生活費を切り詰めたいオレにとってこういう気遣いは、ありがたい。


 それに基本、一人でいたとしても、本当は一人じゃないって思えるのは楽だ。


 どこに居ても、髪を通してでも岸さん……っていうか。


 絶対信頼できる大人がついてるって感じは、イヤじゃなかった。


 だから、オレ。


 笑ってじゃあな、と岸さんに手を振ったんだ。





 心配そうな岸さんに、見送られ。


 『Z』から出てくれば、辺りは夜。空には星が光ってた。


 そんな空に向かって、オレはぐん、と手を伸ばした。





 さあ、ピッカピカの『新生活』ってヤツ。


 早速始めてみてやるか!