うそつき王子の秘密のキス

 岸さんは、もう一度ふふん、と鼻で息をつき、ついでにオレの額も突っついた。


「……で、この決まってる感じが、普通にシャンプー使って洗いっぱなしの状態ね?」


 ……はあ。


 もう息しか出ないまま頷けば。


 岸さん、今度は、ごく普通のワックスを少し髪になじませ掻きまわす。


 すると……


「ぅあ……ダサ!」


「ん、もう! 喉がまずいのに、そんなコト言うために貴重な声を使うんじゃないよ?」


 岸さんは『まったくもう』って言ってたけど!


 長めの前髪をワックスで横に流せば、鏡の中のオレ、一昔前の少女漫画に出て来たようなガリ勉君に見えた。


「……で。
 奏太って少し遠視気味でしょ?
 AN^NAで企画書読んでる時も、時々眼鏡かけてたじゃない?
 それを、普段からかけてみたら……?」


 何だか楽しそうな声に後押しされ、早速。普段からケースごとポケットに突っ込みっぱなしになってる、勉強用の眼鏡をかけてみると。


 ……完璧です、岸センセーー


 ははは。


 確かに、こりゃ別人だわ。


 岸さんの腕は相変わらずとってもイイ。


 地味男君になっても決して『ブサ男』とか『キモ男』系でなく。


 大人しい感じのインテリ系フツ男君になってる。


 ちょっと軟弱で真面目な感じが、バイクや歌とは無縁全く無縁そう。ましてや絶対喧嘩なんてしなさそうな所が、オレの地とは真逆だった。


 あまりの変わりように、すげーなーとビックリしていたら、岸さんが、得意そうに片目を瞑った。