うそつき王子の秘密のキス

『やっぱ、バッサリ切って。
 できれば、モデルやってたのバレねーぐらいフツーの地味カットで』


 そんな、オレの走り書きに、岸さんは苦笑する。


「フツーの地味カットって、ねぇ。
 それ、わざわざこの『僕』に頼むこと?
 誰にでも出来るカットなら『Z』に来る意味無いじゃない?
 奏太君じゃなかったら、出ていけモノよ?」


『ごめん』


 そうだよな。本当だったら、こんなこと。


 超人気で忙しい、カリスマ美容師に頼んでいいシロモノじゃない。


 悪いことは判ってて首をすくめるオレに、岸さんは笑った。


「ま、いいわ。
 事情は判ってるし、なんとかしましょ。
 その代わり、これ以上の髪型の注文はつけないこと。
 僕は、勝手にやらせてもらうからね?
 どうせ、ハサミなんて見たくもないでしょうから、全部終わるまで、奏太は目を閉じてなさい」


 コレはコレで腕の見せ所かもしれない、とつぶやく岸さんに『よろしく~』代わりに首を振り、オレは岸さんに全部を任せて、目を閉じた。


 ………


 それから、どれくらい時間が経ったろう?


 目を瞑ってても判る。


 シャキ、シャキ、シャキっていう、ハサミがモノを切る嫌~~な音と。


 首のまわりに、大嫌いなハサミがうろうろする感覚に、心の中で、うわ~うわ~なんて叫びながら、なんとか耐え抜き。


「もう、いいよ」っていう岸さんの声に目を開けてみて、驚いた。


 だって、そこには。