「ナシェリオ様!」

 いくら呼べども返事はなく、一体どうしてなのかと呆然とした。

 ふと、足元に転がっているものに目が留まり腰をかがめて手を伸ばす。

「呼び笛?」

 手に収まるほどの木彫りの小鳥は、よく見れば笛の細工がしてあった。

 小鳥を呼ぶのに使われる子供の遊び笛だ。

「なんと見事な彫刻か」

 それは、まるで本物のように精巧なだけでなく、細かな模様まで彫り込まれ緻密で繊細な造りに溜息が漏れる。

 たったいま完成したかのような新しい感触に、ニサファは平原を視界全体に捉えて目を眇めた。