「それではこちらに」

 ニサファは収拾のつかなくなった場に溜息を漏らしナシェリオを表に促す。

 外は酒場の喧騒が嘘のように静かに波音を響かせ、町のあちこちに灯されている篝火(かがりび)がゆらゆらと羽虫を誘っている。

 次の漁まで港は静かだろう。

 暗闇を背負った海と、きしむ波戸を横目にしながら歩みを進め、たどり着いた町の外れで二人は遠くにぼんやりと映る森と草原を見渡した。





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※【然許り(さばかり)】
[副]
1 それぐらい。それほど。
「―急にもとめ給はば」〈露伴・風流魔〉
「―の人は思しはばかるべきぞかし」〈源・賢木〉
2 たいへん。あんなに。
「―寒き夜もすがら」〈徒然・二三〉