「君が創ろうとしている世界は──全ての者が幸福になれるのか」

「当然だ。俺がそう望むのだからな」

「冥王の下でそれが本当に適うと? 妬みから闇を受け入れた君がそれを成せると!?」

 摂理を無視した世界に秩序は存在し得るのか。

 秩序なくして平穏は果たして在るのか。

「全ての者が幸福になれる世界は理想だ。そう願うことは悪じゃない」

 けれど、そのために今の存在を消し去ることは間違っている。

「私は、それを許せるほどには世界を憎んじゃいない」

「は、まったくお前は少しも成長しないな。もう少し大人になれよ」

 この世界の奴らは、どこかでひっきりなしに争いを繰り返しているんだぞ。

「旅の途中で出会った逃亡兵を覚えているか。あんなことが今でもどこかで行われているんだ」

 あんな奴らがのさばる世界などに欠片ほどの価値があると思うのか。

 弱き者をことごとく蹴散らすこの世に何の魅力があるというんだ。