ドラゴンから受けた仕打ちに嘆きはすれど、そこから闇を生み出すまでには至らない。

 そんなナシェリオに冥王はいくばくの口惜しさを感じただろうか。

「冥王が、父と母を殺したというのか」

 それが本当であるなら、二人は私のせいで命を落としたのか。

 だからといって、どうして彼らが殺されなければならなかったんだ。

 私がこの器を有したのも偶然ならば、彼らが私を産んだのも偶然だ。

 それが運命だというのならばそれも仕方がないだろう。

 されど、冥王がプレオイシスを暴走させ、二人を死に追いやったことは運命ではない。

 ましてや己の野望のために小さき存在を利用するなど、それが神であった者のすることなのか。