目が覚める。

いつの間にか朝になっていたようだ。

小鳥のさえずりが柔らかく頭に響く。

朝の清々しい風が窓から入ってくる。

起き上がると、突然ズキンと脳が悲鳴を上げた。

頭を手で押さえ、ふらふらする足で立ち上がる。

ぐらぐらと世界が歪む。

あまりのだるさに力が抜けた。

ソファに座り込む。

ぼすっと音を立てて沈んだソファは私のようだ。

いずれ戻る形。

そんな訳も分からない事を考えていると話し声が徐々に近づいてくる。


「おっはよー!!ユイー!!」


キーン、と耳鳴りがした。

朝からこんなにテンションが高いのはもはや異常だと思う。

体調が優れないせいか、いつも以上に頭に響く声。

迷惑にも程があると思う。


「おはよ、セシル…」

「そんな嫌そうな顔すんなよ!!」


当たり前でしょ誰のせいだと思ってんの!!

と突っ込む気も失せる。

人を疲弊させるのだけは上手いと思う、この人。

セシルでは到底話が通じそうもないので、マシューに体調不良を伝え早々に自室へ向かう。

ソファで寝たせいかもしれないけど、この熱っぽさは多分違う。

気を張り過ぎていたのかもしれない。

自室に入りドアを閉める。


ドア越しにも聞こえてくる笑い声。

馬鹿騒ぎしているようにしか思えない叫び声。

それらが全て自分を責めているように聞こえ、思わず耳を塞いだ。

ここに来てから、孤独でいるよりも仲間といた方が楽しい事が分かった。

いつからか『寂しい』という感情が麻痺してしまっていたせいか、一人が好きだった。

一人で本を読み、一人で遊び、一人でいた。いつも。

今思えば、あれは一人ではなくて、独りなんだと知った。


周囲に誰もいない状態。


それがあの頃の私であった。

今こうして笑っていられるのは、独りでいることがなくなったからだと思う。

さすがに、ありのままの自分を表現するなんて大層なこと私に出来ないけど。

ちょっとならって心を許せるくらいには成長した。

人間が元々持っている『寂しい』という感情が呼び起されたのもきっと、このおかげ。

いつも心に穴が開いた状態で日々適当に生きていた私にとっては、それはありがたいことだと言える。

そして、恋が出来た、というのも。