考えながら抱きかかえられていると突き当りに壁が見えた。

その向こう側に一人の男が座っているのが千里眼で見える。

いかにも近未来をイメージした感じの壁だ。

後ろからは怒声を上げた警吏が迫っている。

この壁を突き破るしか方法はないけどそんなの無理だろうし。


「誰かこの壁、壊せよ。」


フウトが。

これほどまでにひどいムチャぶりは聞いたことがない。

ってか、自分でやれよ。

するとセシルが一歩前に出て


「いいよ!!せーのっ!!」


セシルはドアを壊した。

それも素手で。

セシルを除いた四人は唖然。

誰がこんなことをすると予想したことでしょう。

セシルって実は空手家なの?

ビービーと警報が辺りで鳴り出す。

そりゃあそうだ。

こんな大々的にドアを破壊しておいて相手も黙っている訳がない。

たちまち警吏が向こうに現れる。


「…しょうがねぇ。進むか。」

「そういえば俺らは誰を退治するの~?」

「それなw」


確かに。

誰を退治するんだろう。


「今更、行動を台無しにするような発言は…」


やめよう。

言い切る前に言葉が止まった。

前方に人が、こちらを向いて立っている。

仕立ての良さそうなスーツを着こなした男。

そうだ、さっき壁の向こう側にいた男だ。

もしかして、こいつが超能力者?

男の目はらんらんと光り輝いていた。


「何の真似事だ。こんなに建物を壊して。」


男は顔をゆっくりと上げる。

40代後半くらいに見える。

男は私達を嘗め回すように見ると淡々と言葉を漏らした。


「責任放棄者でないのであれば無下に殺せないな。

悪い事は言わない。その場で謝るんだ。」

「だが断るw」


マシューがふざけて言い放つと同時にマシューの前方に白い物体がべちゃっと音を立てて床に張り付く。


「それは蜘蛛の巣だ。触るともうとれないぞ。」


男は楽しそうに白い蜘蛛の巣を次々と手から出し、巣を投げつけてくる。

べちゃりべちゃりと音を立ててそれは足元へと着地する。

マシューだけでなくフウトも狙っているように見える。

よけるたびにフウトが跳ねるので、その度に私の体は揺さぶられる。


「下ろしてフウト…」

「今下ろす。おらっ」

「うわぁ~っ!!ユイのことこっちに投げないでよ~!!」


私はハヤテに抱き留められ下ろしてもらう。

フウトとハヤテの連携プレーってすごい…

私が関心しているとすぐ横を蜘蛛の巣が通過する。


「お嬢さん。君がターゲットだ。」


…えぇ!?なんで私!?