『……亜季…』


あたしに気がついて、健太はあたしの名前を呼ぶ。




『…具合、どう?』


あたしが問いかけると、健太はクスッと笑った。





『……小さい頃から、亜季はそうだった』



『…え…?』



『俺が体調を崩すと亜季は決まって、俺の隣で心配そうにしてた』


健太はそう言って、遠い記憶を呼び覚まして、穏やかな顔をしながら、言葉にする。



『…健太はいつもバカやって風邪ひいて、でも、あたしはいつもそんな健太が心配だった。
 だから、いつもこんな風に健太が目を覚ますの、ずっと見てた気がする』



あたしの言葉に健太は困ったような顔をしながら、


『…それも、幼馴染だから?』


…そう問いかけてきた。




『…そうだね』


あたしの言葉を聞いて、健太はゆっくりと起き上がる。



『…幼馴染って、なんなんだろうな』


健太はポツリ、そう言う。



『…え…?』






『俺、好きな奴ができても、恋人ができても、亜季との関係は変わらないって思ってた。
 むしろ亜季がいる生活があって、そこに付加価値として恋愛があるって思ってた…』




『…でも、違うんだな…』



健太が寂しそうに微笑むから、あたしまでなんだか寂しい気持ちになる。




『でも、健太には由奈ちゃんがいるじゃない?
 あたしなんて、これから好きな人を見つけなきゃいけないんだからねー』



『亜季、誰も好きにならないでよ』


せっかく笑って言えた言葉なのに、健太は真顔でそう答える。