でも、健太はあたしを楽にはしてくれなかった。
『おい…亜季』
健太は由奈ちゃんを置いて、あたしの後を追いかけてくる。
『健太、由奈ちゃんの傍にいなきゃダメでしょ、あんたは』
あたしが何度そう言っても、健太はあたしの後をついてくる。
『亜季』
健太のその声に振り返りたい。
でも、今は無理。
だって、早く一人になりたい。
そうじゃなきゃ…健太にこんな顔を見られたら…
『亜季』
健太はあたしの名前を呼び、そしてあたしの腕を引いた。
その反動で振り返る形になってしまって…
健太はあたしの顔を覗き込んでる。
『亜季、なんでそんなに悲しい顔をしてんの?』
…バカ…
この人は……健太は本当にバカだ…。
悲しそうな顔とか…言い当てんな…。
『…そんなことない』
『嘘、俺、亜季のことなら分かるって前にも言ったじゃん?』
分からない…でしょ…
あたしだって、今のこの健太の行動が分からないよ…
『亜季、明日は一緒に行けるでしょ?』
健太の真っ直ぐな言葉に心が揺れる。
どうして、健太はそんなこと言うの…?
明日も明後日も、その次も、もうないよ…
『……健太…』
あたしがそう言ったところで、
『健太くん、そんなに亜季さんが大事なの…?』
彼女はそう健太に問いかけた。

