Smile!

ドアを閉めてやっと取り戻した冷静さ。


「ってーなぁ……あー、死ぬかと思った」


急に六は復活しました。


冷静さ崩壊。


「ひぃっ!?」


あんなに血まみれで呻いていた筈なのに、今はケロッとして座席に体を預けている。


「ん?なんだあんた。バケモンでも見たような顔してるぞ」


正直、その通りでしょ。


みきりさんは、なぜか驚いた様子はなく、

「バーカ。七和。さっきまでくたばってたあんたがいきなり元気になったら、誰だってビビるわ!自分の助手にくらい説明しとけってーの。まったくバカか」

馬鹿馬鹿言っていた。


「名字は嫌いだ。それに俺はバカでもバーカでもない。ったく。おまけにコイツは助手じゃなくて依頼人だ」


「!」


みきりさんは前を向いて運転しながらも、苦虫を噛み潰したような顔になっていた。


「六……あなた大丈夫なんでひゅか……?」


声、震えた。


よく見るとワイシャツが破れた左腕には、鋭利な物が刺さったような跡が残っていたが、血は止まっているみたいだ。


変わりに横になっていたシートが大量の血液で赤黒く染まっていた。


う゛、血の臭い……。


「可哀想に、震えてるじゃん。六に関わると《ろく》な事にならねーな、一般人まで巻き込んで。ほんと、コワイコワイ」

「つまんねーから。それに俺はあんなもんじゃ死なねーよ」


そう言う六の表情は、いつものしかめっ面だった。



「……悪かった」

「え?」


突然六は私に頭を下げた。


「依頼人を危険にさらすなんて、俺は―――」


私は自分の耳を疑った。


「《ホムンクルス》失格だ」


どうした、耳!?