艶麗な夜華

「それで会社を辞めてホストに……」




里親が癌にならなければ、


今頃恭也は一流企業で働いていた。


人生が……その事によって大きく変わった。



ふと向こうの席に目を向けると、


女性客の煙草に火をつける恭也。



笑顔を見せたり、


横目でにらみ付けたり、


そして時々顔を覗かせ、


軽く頭に触れる。


突き放すようなしぐさをして、


また引き寄せて。


手の動きやその表情はいつだって艶麗で、


今や彼は夜の華。






マスターは煙草の火を消すと静かに話す。



「稀に居るんだよな。


不幸な星のもとに生まれたと言えばいいのか、


いろんなものを背負って生きていく羽目になる人間。


恭也がまさしくそうさ。


アイツは数々の大きな悲しみを背負って生きている。


でも、そういう人間は人の目に魅力的に映るのさ」



カラン



グラスの中の氷が音を立て、


滴が悲しく落ちる。








"強くなれ。それ以外でお前が救われる方法はない"



前に恭也が翼に言った言葉を思い出した。