艶麗な夜華

「まったくとんでもない店を作りあがる。


さすがだ。


あんな路地裏で小さな店をやるなんて、


最初からアイツには向いていない。


沙希ちゃんもそう思うだろ?」



たしかにこんなお店を開く力がある恭也が、


メフィストフェレスという小さなお店のオーナーでは、


もったいない気がした。



でも、なんだろう……



目の前の大きな水槽の向こうに見える恭也。



妖艶なしぐさと目つきで女性客を魅了する。



恭也に寄り掛かる彼女。



それを恭也はそっと元の姿勢に戻し、


そして肩に手を回す。



わかってるよ、仕事だって。


こうして毎日お客さんでいっぱいにしなきゃいけない事も。




頑張っている恭也。



わかってる。



でも……今、水槽の奥に見える恭也は、


いつもと違う恭也で、


それはまた、あたしが知らない彼。



凄く遠く感じて、


凄く切なくて、


気持ちがモヤモヤして、


それはただのやきもちで、


わかっているけど止められないそれをどうにかするには、


今すぐ此処で恭也があたしを抱きしめてくれない限り……無理。