艶麗な夜華

翔が帰り、時間はもう3時になろうとしていた。



今すぐに伝えようと、明日伝えようと同じ事。



この時間にそれを聞いて恭也がなにかできる訳ではないのだから。



それなのに……



あたしはスマートフォンを手に取ると恭也に電話を掛けていた。



寝ているかもしれないから、


少しだけ鳴らして切ろう。



そんな事を思いながら1コール目。



早く切り過ぎては、間違って掛けたんだと誤解されてしまうかもしれない。



2コール目。



もしかしたら今、電話に出ようとしているかも……



そして3コール目。



「なんだこんな時間に……」



冷めた口調の恭也の声。



「ご、ごめん……寝てた?」



「なんの用だ」



不機嫌そうに話すその人に、


言葉が上手く出てこない。



だからますます彼の口調は厳しくなる。



「あっ、あのね…あの…」



「用がないなら切るぞ」



「ちょっと待って!あのね!」



飛鳥の事を話そうとした瞬間だった───



「なに?恭也?なんて言ったの?」



電話の向こうから……ヒカリさんの声。



どうして……



耳に届くBGMは店で流しているジャズではなく、


この前恭也の部屋で聞いたもの。



思わず電話を切ってしまったあたし。





折り返し掛かって来る事のない電話を握りしめ、


次々と襲ってくる嫌な思考に苦しむあたしは今、


嫉妬という感情にどにかなりそうだった。