もう、明日からあたしは必要なくなる。


恭也は今よりももっと強くなって、

そして今以上にあたしの手には届かない存在になる。


昨日から、何度も思った。


弱く頼りない恭也を見て、

ずっとあたしがあなたを守るから、

だから、何処にも行かないでと。

もう、強くなんかならないでと。


「沙希」


はっきりとした口調であたしの名前を呼ぶ恭也。


「なに……」

「明日目が覚めたら、お前を家まで送って行く」

「……うん」


インターフォンが鳴り、

部屋を出て行く恭也は、

すでにいつもの恭也に戻っていた。


"俺はお前なんかにどうこうできるような男じゃねぇよ"


前に恭也があたしに言ったその言葉が、

くつがえる事はない。