「百合花は……逆に安心してましたよ。

ずっと……罪悪感でいっぱいだったって。

嫌われたくない気持ちと、

離れたくない気持ちがあって、

どうしても恭也さんに話せなかったそうです。

だから、この事を俺の口から話して欲しいと言われました」


「そうか……」


静まり返る店内。

ジャズの音楽が悲しく響く。

タクミさんは恭也だけじゃなく、

百合花さんをも苦しめていた。


あたしは恭也の顔を見た。

いつもと変わらない表情。


恭也は今、なにを思っているの?


なにも聞けなくて、


なにを聞いても答えてはもらえなくて、


知ったところでなにかが変わる訳じゃなくて……


でも少し、気持ちがゆっくりしている。


引っかかっていたものが、


ヤスのおかげで解決した。



でも……解決したのは百合花さんの事だけだったんだ。


この後に起こる事なんて誰も予想なんてしていなくて、


そして……あんな恭也を見る事になるなんて……思いもよらなかった。