艶麗な夜華

あたしは椅子から立ち上がると恭也の背中にしがみ付いた。


「タクシーなんか呼ばないでよ!」


すると恭也は電話を置き、


低い声で話す。


「俺から離れろ」


「………」


鋭い目で見下ろし、


しがみ付いた手を勢いよく振り払う恭也に、


いくら酔っていてもショックは大きく、


涙が零れる前に店から出るので精一杯だった。



「ごめん……あたし、帰るね……」



家に帰るとシャワーを浴びベッドに潜り込む。


この前此処であたしを抱きしめてくれた恭也は優しく、


体に残る感触と甘い香りは覚えている筈なのに、


振り払う冷たい手がそれをおぼろげにした。