艶麗な夜華

2人から目をそむけ洗い終えたグラスをシェルフに並べる中、


彼女が本題を切り出した。



「あのね、昨日ウチの店にタクミが来てね」



"タクミ"


それはあたしが聞いた事のない人の名前。




「アイツ、まだこの町に居たのか……」



ゆっくりとグラスに口を付ける恭也。



なにがどうとかは説明がつかない。


ただなんとなく、なんとなくほんの一瞬、


恭也の顔と声の表情が変わった気がした。



「あちこち行ってたみたいなんだけどね。


それでね、タクミこの町にホストクラブ出すんだって」


「本人から聞いたなら間違いないな」


「うん。愛華のお店の隣のビルに出すみたい。


そんなに大きくやる予定はないらしいけど、


スタッフもだいぶ集まったみたいで、


来週でも恭也と愛華のところに挨拶に行くとか言ってた」



恭也は鼻で笑うとグラスの中のウイスキーを飲み干す。


「それはわざわざご苦労だな」


「ねぇ恭也?」


少し表情が曇る彼女。


「なに?」


「誤解しないで聞いて欲しいんだけど、


タクミは恭也の事をあまりよくは思ってないわ。


たぶんタクミは、このお店を潰すくらいの気持ちでいると思うの。


それが可能だなんて思ってないよ。


ただ、そのくらいの気持ちがタクミにあるって事。


それは、愛華に対しても同じなんだけど」