艶麗な夜華

「何処に行きたい?」


「うん……恭也と一緒に行きたいところはいっぱいあるけど、


この体じゃ……」


「それならまた、何処かにドライブでも行こうか」


「うん!外出許可貰って今週中にでも!」


「あぁ。俺はいつでもいいよ」


表情も話し声も言葉づかいも全て、


あたしが知っている恭也とは違う。


それはまるで別人。


「ねぇ恭也?昨日の話の続きが聞きたい」


「いいよ」


恭也は車いすのハンドルに片手を掛けたまま彼女の脇にしゃがむと、


静かに話し始める。



「幾つもの体を持つ事を望んだ、


アリストファネスの願いは叶ったってところまでは昨日話したよね?」



「うん」



「じゃあ、続きを話すよ?」



「はいっ」



「でも、アリストファネスは自分が望んでいた事とは違うと、


神に嘆くんだ」



「どういう事?」



「たしかに彼は、いくつもの体を手に入れた。


でも、それは彼が望む形とは大きく違っていたんだ。


いくつもの体を手に入れたというより、


1つの体が複数に分裂しただけだったから。


おかげで彼の姿は自分にも、


最愛の恋人、エウフラシアにも見えないくらい薄くなってしまったんだ」



「そんな……」



「神は最初から言ってたさ。


本当にお前だけが不平等なら、


その願いは叶うって。


でも、そうじゃなければ望み通りにはいかないってね」