「そんなに立派なものは用意出来ないけど、その時が来たら、ちゃんと渡すから待っていて」


肩を引き寄せられて、軽いキスをされる。

小道具とはきっと指輪。理解できた私はコクりと頷いて、雅也さんの肩に頭を預けた。

いつかしてもらえるプロポーズのためにも、私は雅也さんのように「よく出来た恋人」になろうと心の中でそっと誓った。


昔、好きだった人に再会したからと惑わされてはいけない。目の前の現実にしっかり向き合って、向けられる愛を受け止めよう。

真島くんとは絶対に会わない。

会ってはいけない。

どんなことがあっても、会わない。

何を言われても会わない。

絶対に会わない。


目を瞑って、心の中で何度も何度も「会わない」と繰り返し、自分に暗示をかけた。