過去恋に今の鼓動を重ねたら

慌てて時計を見れば、時間はまもなく8時。インターホンを鳴らしたのは雅也さんだ。


「あ、ごめんね。ちょっと人が来たから、また後で」


真島くんの返事を聞かないで、一方的に電話を終わらせ、玄関へと急いだ。


「お疲れさま」


「うん」


ドアを開けて、雅也さんを入れる。スーツの上着を預かって、ハンガーにかけた。こういう流れは奥さんになった気分になる。


「なんか話し声が聞こえたような気がしたけど、電話してた?」


「うん。実家の母と話してたの」


やましいことはしてないと思っていても、また咄嗟に嘘を重ねてしまう。

やっぱり酷い…悪い女だ。


「ふーん。そういえば、真島さんからは連絡来たの?」


「まだだよ。いつするとか言ってなかったから、今日じゃないかも」


どれだけ私は嘘を重ねるのだろう。一度嘘をついてしまうと、本当のことが言えなくなる。だからと言って嘘を重ねてはいけないことは分かっている。