過去恋に今の鼓動を重ねたら

「お先に失礼します」


「お疲れ様でした」


私は朱莉と一緒に退社した。スーパーに寄って、食材を買いに行く予定だ。


「紗菜さん、このまま帰るんですか？」


「うん。買い物して帰るよ」


朱莉はこれから彼氏と待ち合わせしているそうだ。

私も一応自分の部屋だけど、待ち合わせしていることになるのかな？


「紗菜さん、家に帰って何をするのですか？」


「え、何って…ご飯作って食べて、テレビでも見るかな」


朱莉の目が何かを探るように鋭い。今日は何でみんなそんな鋭い目をするのよ？


「それは誰とですか？」


「え、１人だよ」


雅也さんとのことは秘密だから、１人寂しく…としか返事が出来ない。


「怪しいです！」


私の正面に来た朱莉は両肩を掴んで真っ直ぐ見つめる。

鋭い目は怖いな。


「何も怪しいことなんてないよ」


つい仲良くしている朱莉にだけは本当のことを言おうかと思ったけど、どこでどう広まってしまうか分からない。