過去恋に今の鼓動を重ねたら

少し鋭いとも見られる黒い瞳が近付くとほぼ同時にキスをされた。触れるだけの軽いキスだけど、鼓動が早くなる。


「ここ、会社だよ」


「分かってる。紗菜はかわいいね」


優しく笑う雅也さんは、私の頭を撫でた後、立ち上がり、出来上がった資料を抱える。

一瞬呆けてしまった私も急いで立ち上がり、ホチキスなど使った事務用品を手にして、一緒に会議室を出た。


「あ…」


正面から真島くんと久保田くんが歩いてくる。


「今、全部終わりました」


真島さんは、社内全部の複合機のメンテナンスが終わったことを雅也さんに報告する。


「どうも、ご苦労さまでした」


「これ、作業確認書ですが、総務課にお持ちしますね」


「ああ、いいですよ。受けとります。紗菜、もらって」


「あ、はい」


私よりも雅也さんが持っている荷物のほうが多くて、両手が塞がっている。だから、私に託したのだろうけど、ここで下の名前を呼ぶなんて…