過去恋に今の鼓動を重ねたら

予約してくれたイタリアンレストランは徒歩5分のところにあった。

奥にある半個室に案内される。


「河原は飲めるほう?ワインをボトルで頼んでもいい?」


「うん。普通に飲めるよ」


白ワインが前菜と共に届く。


「じゃあ、お疲れ様」


「うん」


グラスを合わせて、一口飲む。口当たりのよい白ワインで美味しい。


「でもさ、やっぱり信じられないな」


「え、何が?」


「こうやって河原とワインを飲む日が来るなんて、中学の時は思いもしなかったからさ」


真島くんはグラスを置く私を見ながら、笑う。笑顔は中学の時と変わらないけど、大人の色気が感じられて、思わず前菜へと目を逸らした。

スモークサーモンをフォークにのせる。


「そうだね、お酒を飲める年になったんだよね」


視線は皿に移したままで答える。


「うん。大人になったらさ、出来ることも増えたよね」


あれから10年経って、私たちはお酒の飲める大人になった。