「そういえば、修学旅行の時のバス、覚えている?紗菜、俺の前に座っていたよね」


「うん、そうだったね!」


旅行先は関西だった。大阪まで新幹線で行き、駅からはバスで観光した。あの時は、まだ圭司を好きだと認識していなかったから、意識することなく楽しく話せていた。


「紗菜にさ、ポッキーを食べる?って、差し出したら、嬉しそうに口を開けたよね。すごくかわいかったけど、あれはさすがに照れたなー」


「あー、思い出した!私ったら、恥ずかしいことをしたよね」


後ろの席からポッキーが1本、出てきたから、躊躇することなく、首を後ろに向けて、口で受け取ってしまったのだ。

圭司の目が見開かれて、どうしたのかと思ったら、圭司の隣に座っていた男子が「うわっ、マジで?ラブラブ!」とか騒ぎ出して、自分のしたことが恥ずかしいことだったと気付いた。

手で受け取るべきだったと。

あの後、恥ずかしくて旅行中、圭司と話をすることが出来なかった。今となっては、かわいい思い出である。