「良かった」


ものすごく安心した顔をする圭司に優しく抱き締められる。そっと腕を圭司の背中に回して、ギュッと嬉しい気持ちを含めて、力を込めた。


「心配だったの?」


「ん、好きだったけど、今は好きじゃないみたいに振られているし、友だちだとも言われたし、もう男して見てもらえないんじゃないかと思った」


頭上から聞こえる声は少し震えている。不安にさせてしまったのは、狡い私だ。それなのに、ずっと見てくれていた。


「ごめんね。私が曖昧だったから。でも、昔も今も私にとって、圭司は特別な存在だよ」


「ねえ、紗菜。俺の心臓の音、伝わっている?」


「うん。クスッ、同じくらい早いね」


触れている胸から同じ早さで動く心音が伝わってきていた。鼓動が早くなっているのは、私だけではない。圭司も同じで、同じように感じているのが嬉しい。