過去恋に今の鼓動を重ねたら

「は?俺は、忙しいから、無理だよ」


確かに営業部の圭司は忙しく動き回っている。

だけど…


「何言ってるんだよ。紗菜ちゃんを口説いている暇はあるくせに」


私も思ったことだ。実際、圭司はよく総務課に顔を出す。それなりに用事があって来ているのだけど、それだけではないと思うのは、私の自惚れかな。


「外回りは疲れるからさ、紗菜の顔を見に行っているんだよ。別にいいだろ?そのくらいしたって、癒されたいんだよ」


前にも思ったけど、圭司はさらりとすごいことを言う。

私の顔を見に来ていた?自惚れではなかったと喜びたいけど、この顔に癒し効果なんてないと思う。


「はいはい。しっかり働いてくれてるから文句は言わないよ。じゃ、出掛けるか。紗菜ちゃん、悪いけど、ここは任せたよ。総務課長には話をつけてあるから、少しくらい時間かかってもいいからね」


「はい、分かりました。行ってらっしゃい」