過去恋に今の鼓動を重ねたら

実らなかった幼い恋だから、完全に忘れることはなかった。でも、雅也さんは全然似ていない。


「頑張って我慢するよ」


やっと離れてくれた圭司を見て、肩の力が抜けた。これ以上続いたら、心臓が爆発してしまいそうだった。


「あ、紗菜さん、いた!あれ、真島さんも?」


「え?朱莉…いや、別に何もないよ」


「その言い方、逆に怪しいですよー」


怪しまれてしまったと思い、先に弁解してしまって、失敗だ。突っ込まれて当然だ。

圭司はそんな私を見て、笑いを堪えているのか肩を揺らす。


「久保さん、紗菜に急用?」


「あ、そうなんです。紗菜さん、社長がお呼びです。今、総務課に来てますよ」


「え、社長が?」


社長と関わることはあまりない。それに、直々で呼ばれるなんて、今まで1度もない。

急用と言われて、怖くなってくる。とんでもないミスをした?

でも、総務課の私がするミスなんて、会社に損害を与えるようなことは、まずないはず。

何だろう?


「紗菜、とにかく行こう」


圭司に腕を掴まれて、ハッとした。呼ばれているなら急がなくちゃ、