「岸本さん、結婚したんだって」


情報が伝わるのは早い。だけど、ここは総務部が使う給湯室だ。総務部以外の人が入ることは、まずない。だから、聞こえてきた声の主に驚いた。


「何で圭司がここにいるのよ」


「１人で泣いているかなと思って」


「圭司って、心配性？」


「いや、そんなことないと思う。まあ、紗菜に関してはいろいろと心配しているけどね」


いつも気にかけてくれていて、こんなふうに声をかけてくれるのは嬉しい。圭司の優しさには、いつも心が揺れ動く。


「それだけのためにわざわざここまで来たの？ありがと」


最近の圭司の優しさには、自然と笑顔で返してしまう。そうすると、いつも少し頬を赤くするから、何だか心がくすぐったくなって、楽しい。


「そ、それだけじゃないんだ。週末あたり、晩ご飯を一緒に食べない？」


「うん、いいよ。金曜日にする？」


「いや、土曜日にしない？」


土曜日も予定がなかったので、承諾した。