過去恋に今の鼓動を重ねたら

「紗菜たちは別れたんだってさ」


「なに！？じゃあ、圭司の嫁さんに？」


「いや、そんなことは言っていないだろ」


いつの間にか、このテーブルには私たち３人しかいなくなっていた。

社長がいるからか、他のテーブルにいる人は誰もここに近付いてこない。こんな個人的な話を聞かれないのは、助かるけど、誰かにここから連れ出して欲しい気分である。

私が雅也さんと別れたからって、圭司の奥さんになるとは、話が飛んでいる。


「何でだ？紗菜ちゃんは、圭司が嫌いか？圭司は将来有望だぞ」


「いえ、あの…嫌いでは…でも、まだ…」


別れたばかりの身で、圭司のことまで考える余裕がない。今は、ただ時間が欲しい。

それに、将来が有望だという理由で圭司を選びたくない。一人の男として考えたい。今は、無理でもいずれ…。


「すみませんが、社長。そろそろ挨拶の言葉をお願いします」


今年の納涼会の司会者である営業部の主任が社長を呼びに来た。