過去恋に今の鼓動を重ねたら

「いや、岸本くん。だって、君と紗菜ちゃんは…」


社長も雅也さんの言葉に驚いたらしく、飲もうとしていたグラスが止まる。自分の彼女を他の男とお似合いだなんて、言うなんて予想もしないから、社長が驚くのも無理はない。


「ほんと、無神経な人ですね」


圭司は、雅也さんを睨んでから、あと一口程度入っていたワインを飲み干した。

上機嫌だった社長が怒る圭司を呆然と見る。何よ…このちょっとした修羅場のような状況は…。圭司はともかく雅也さんが何を考えているのか分からない。


「あ、俺、このあと用事が出来てしまったので、すみませんが、失礼します」


「は？」


社長と圭司、それと私もが突然立ち上がる雅也さんに唖然とする。雅也さんは、そんな私たちにただ頭を下げて、会場を出ていった。


「おい、どういうことだ？彼は紗菜ちゃんと、付き合っているんじゃなかったのか？」


豆鉄砲をくらったような顔をしていた社長が、慌てて口を開く。