過去恋に今の鼓動を重ねたら

酔っ払いの戯言だと思い、肯定も否定もしないで聞き流すことにした。

ここのテーブルが最後になっていたから、社長はなかなか動く気配がなかった。他のテーブルを見ると、みんな動き出している。羨ましい限りだ。

私も他のテーブルに動きたい。だけど、社長がここにいる限り動けそうもない。何か良い口実はないかな。


「あれ、岸本くんもここだったんだ」


「はい。お疲れさまです」


経理課長との話が一段落したところで、社長が雅也さんに気付いた。経理課長はおぼつかない足取りでトイレへと向かっていった。


「いやー、さっきのはほんの冗談だからね。だから、そんな怖い顔しないで」


「いえ、何も怒ってもいません」


社長はまだ私たちが付き合っていると思っているから、雅也さんに気を使っていた。


「いやいや、本当に悪かったな」


「いえ、俺も二人はお似合いだと思っていますから」


「え」


思わず雅也さんの方へと顔を向けてしまった。一体何を言い出すの?