過去恋に今の鼓動を重ねたら

「け、圭司。ちょっと…」


行き交う人の多い朝の駅で、抱き合うなんて不謹慎もいいところ。抱き合うというか、一方的に抱き締められているのだけど、周囲の目が気になる。

会社の人の人だって利用しているから、知り合いに見られるかもしれない。恥ずかしい。


「無理しなくていい。俺がいるから…寄り掛かれよ。辛いんだろ?」


一瞬、胸が高鳴った。

慰めの言葉がスッと胸に入ってきて、弱った心を癒してくれる。腕を圭司の背中に回して、しがみついたら、きっと受け止めてくれるし、楽になれるだろう。

だけど、こんな中途半端な気持ちでは、ダメだ。雅也さんに振られたからって、圭司に移るなんて、都合が良すぎる。

寄り掛からないで、ちゃんと自分の足で立とう。ちゃんと、自分で力で歩こう。


圭司の胸を軽く押した。圭司が私から、ゆっくりと距離を空ける。


「ごめん。私、一人で大丈夫だから。一人でちゃんと立てるから。ありがとう…圭司」