過去恋に今の鼓動を重ねたら

何で紗菜ではない女にプロポーズをしているんだ?

唖然とする俺と男の目が合って、笑顔で細められていた男の目が見開かれた。他人のそら似かとも思ったが、岸本雅也に間違いはなかったようだ。


「岸本さんだよね?」


「ああ…まさか、こんなとこで真島くんに会うとは思わなかった」


「これは一体、どういう…」


「雅也、知り合い?」


俺が聞こうとしていたことは、薬指に輝くリングを嵌めた女によって、遮られる。たった今、岸本さんが贈った指輪だろう。

紗菜との付き合いよりもこの女との付き合いのほうが長そうだ。紗菜とは1年も付き合っていないはずだから…紗菜のほうが浮気相手というわけか?


俺は、口を固く結んだ。ここで、紗菜とのことを暴露して、この幸せそうな男を罵ってもいいが、何も言わないことを決めた。

決めた理由な、自分でもハッキリと分からないが、紗菜が傷付く姿が見たくなかった。