過去恋に今の鼓動を重ねたら

「残念ながら運命じゃなかったんじゃないかなと思うんだ。まだ諦めてはいないけどね」


俺の人より遅い初恋は中学の時で、1年間だけ同じクラスになった河原紗菜だ。

引っ越ししてしまったことで諦めるしかなかった恋で、初恋は実らないものということを実感した。でも、実ることのなかった初恋だけど、忘れることはなかった。

河原紗菜のはにかむような笑顔が大好きだった。真っ直ぐ俺を見るはっきりした瞳も好きだった。だから、10年振りに取引先の会社で再会をしたことは、運命だと思い、あの初めて感じた恋心がよみがえった。

大人になった紗菜はきれいになっていたが、あの頃と変わらない笑顔を見て、胸が締め付けられた。そして、紗菜が欲しくなった。

だけど、紗菜には恋人がいた。再会が遅かったのかと嘆いたが、諦めることが出来なく、紗菜の勤める会社が幸いにも俺の伯父の会社だったこともあり、転職を決めた。

紗菜の近くにいけば、手に入る可能性があるのではないかと思ったが、現実はうまくいかない。